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ヘソが茶を沸かしっ放しの件について

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こっそり夜逃げの予定が、予想外の展開で向こうから「逃げていいよ」的な流れになり、じゃあ堂々と荷造りするぜひゃっはーと思ってたら、ちょっと甘かった。


ケンカ腰、泣き落とし、嫌がらせ、双方の親しい人間を巻き込みに掛かる、全部おれのせいと言いふらしまくり、挙句に、完全に引越しする当日には警察か何か呼んで、勝手に物を持ち出さないか見張りを立てるんだそうだ。


いやほんとに、頭も悪いし脳が足りてないとは常々思ってたが、ここまでバカだとは思ってなかった。こんなバカに、何で10年以上付き合ったんだろうな、ほんとにバカだ自分。


おれに散々尽くしたんだそうだ。心底惚れてくれてるんだそうだ。

ほー、じゃああの浮気の山は何だったんだ? チャンスさえあれば片っ端から声掛けてたのは何だったんだ。どこかで引っ掛けようと躍起になってたのはたった3日前のことだが? 一緒にいる間、おれがどれほどブサイクでまったく魅力がなくて、いいとこなんかひとつもなくて、無能で、全然おまえに相応しくないって、散々言ってたのは何だったんだ。

おれの貯金を、当たり前のように浪費して、足りないってブチ切れたのも覚えてないのか? 暴力沙汰になりかけて警察呼ぶ羽目になったのも覚えてないのか? 急性ネトゲ中毒を心配してると言ったら、「関係ないだろ!」とキレたのも覚えてないんだろうな。

おれが仕事で忙しい間、無職のヒモ状態で鬱屈してたのか、早朝ゲームの音量上げまくって寝させてくれなかったり、音量下げてくれと言ったら、ニヤニヤ笑って「お気の毒☆」って言ったことも覚えてないんだろうな。

都合の悪いことは全部ブチ切れてうやむやにして、怒らせるおれが悪いっていう方向に持って行くあの手管は、ほんとうに見事だった。その才能を、仕事に生かせなくてほんとうに残念だったな。この13年、きちんと就職してた時期って、2年に足りないよな? どの仕事もひと月続かなかったよな。

友達いないのはどうしてなんだろうな。なんでおれの友達にそんな固執するんだろうな。彼らは、残念ながらおまえとは付き合いたくないそうだ。おまえと付き合ってるおれとも付き合いたくないそうだ。今回は、おれは友達を選ぶよ。


2時間ごとに言うことがコロコロ変わる。

「おまえが出て行く時はここにいたくない」

「出て行く時はしっかり見張ってるからな! おまえが何を持ち出すか見てないとな! おまえなんか全然信用できないからな! こっそり出て行こうなんて思うなよ」

「俺は、たくさんおまえを傷つけてたんだな、ほんとに悪かったよ」

「おまえを傷つけたからって何なんだよ! 今さら言われても知るか! おまえなんかもっと俺のことを(以下略)」

「俺の家族と今さら仲良くしようなんて思うなよ! 二度と口聞くな!」

「おまえは冷たいヤツだ、出て行くって言ってから一度も俺の家族に事情説明しに電話してない」

「俺の妹に二度と近づくな!」

「妹がどんなにおまえに会いたがってるか、おまえどうでもいいんだろうなそんなこと」


あー疲れる。頼むから静かに荷造りさせてくれないもんか。

上から目線で、「それは持って行かせてやってもいい」とか、おれが買ったものを指差して言う。

ああ、この調子じゃ、一緒に暮らし始めた時に無職で無貯金で、最初の半年、全部おれが何もかも払ったことなんか覚えてないんだろうな。覚えてないのは知ってたが、嫌がらせのレベルになって来ると、今まで踏みつけにされた分の怒りが新たにこみ上げて来て、思わず殴ってしまいたくなる。殴らないけどな。手が汚れるから。


向こうの家族には、引越しが完了して落ち着いてから、こういうことになりましたと報告するつもりでいるんだが、それは誠意がないやり方なんだそうだ。

まあ、何をしても気に入らないんだろうから聞き流してるが、うんざりするほど長いリストで、「いかにおまえが俺に相応しくないか、いかにおまえが無能な同居人か」を並べ立てた後で、「でも俺はおまえに惚れてるんだ!」って言われてもなあ。そこ感動するところ?

むしろ、「いやだからこそここでやめて、お互い合う人を探せばいいだろう」(おれはしばらく誰とも関係を持ちたくない)と思うのが真っ当じゃね?

「こんな取柄のないおまえでもいいと言ってやってる俺様を捨てるとか、そんな傲慢が許されるわけない」、という奴隷に対する態度なんだろうなこれ。


もう奴隷はやめだ。これ以上友達も時間も失くしたくない。おれはこれから、自分のことだけ大事にして生きて行くんだ。

給料をネトゲにつぎ込まずにちゃんと家に持ち帰ってくれるかどうか、今月の家賃や光熱費をそれで払えるかどうか、払えないとなれば役立たずの無能と罵られる、そんな生活からおさらばするぜ。

今度こそ逃げ切る。絶対に戻らない。蒸発して消えて、一生顔も見たくない。同じ部屋で呼吸することもしたくない。もう、これ以上汚染されることはない。ひとりになって、きれいな空気で精一杯深呼吸するんだ。


おれは奴隷じゃない。おれは無能な役立たずじゃない。おれはブサイクで真性喪だが、悪い人間じゃない。

おれはこれから、自分の言葉でしゃべって、自分の足で歩いて、自分の好きに生きる。もう、他の誰かの評価をいちいち気にして萎縮して生きる必要はない。

おまえが並べ立てる、素晴らしいパートナーのおまえをおれが冷酷に裏切って見捨てて行く、というあれこれは、正直聞いてて吐き気がするが、それもじき終わる。おれが去ったら、虚空に向かって言い続けるといい。

おれは、おまえの家政夫で無料売春夫で母親だったが、これからは違う。おれはやっとまたおれに戻る。誰かの奴隷でないおれに戻る。

もう、おまえのことなんかどうでもいい。もうすぐ終わりだ。

投稿者 y6p6jr | 返信 (0) | トラックバック (0)

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